音を保存できることと、ノブを回して音を探すこと。その両方を日常の机に置くためのアナログ・シンセサイザーがminilogueだ。坂巻は商品企画を担当。37鍵に4ボイスを収め、和音からユニゾンまで、発音の組み合わせを切り替える。完成した音色は200のプログラム・メモリーへ残せる。
16ステップのモーション・シーケンスは音符だけでなく、ノブの動きも記録する。フレーズを繰り返しながら響きを変えれば、その操作が演奏の一部になる。有機EL画面のオシロスコープには、耳で聴いた変化が波形として現れる。音づくりの手応えを、視覚でも捉える仕組みだ。
その中心にあるのが、4つの発音を組み替えるボイス・モードだ。四音を別々に弾けば和音になり、重ねれば一本の旋律に厚みが加わる。同じ回路の資源を、演奏する音楽に応じて使い分ける設計である。鍵盤で押さえた形と、耳に届く音の重なりを行き来しながら、音色だけでなく演奏の性格まで変えていける。プリセットを呼び出した後も、パネルの操作は新しい音を探る入口として残されている。
音色を記憶できることは、偶然よかった音を後から演奏へ戻せることでもある。一方、画面に映る波形は音の名前を教えるのではなく、ノブを動かした結果をその場で示す。記憶と観察という二つの支えによって、試行錯誤を次のフレーズへ持ち越せる。譜面を弾くための鍵盤と、音そのものを研究する操作盤が隣り合う。その距離の近さが、小さなアナログ楽器を、繰り返し触りたくなる制作の道具にしている。
開発者インタビューで坂巻は、ノートPCのそばに置ける大きさと手の届く価格を重視したと語る。復刻で蓄積した技術を、新しいアナログ楽器へつなぐ企画。親しみやすいサイズの中に、音を作り、記録し、また弾く循環がある。