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ARP ODYSSEY

名機をいまの楽器として取り戻すとき、何を受け継ぎ、何を変えるか。ARP ODYSSEYの復刻で坂巻が担ったのは商品企画だ。原機の開発に関わったデヴィッド・フレンド(David Friend)の助言を得ながら、1970年代の音と操作の考え方を、現代の演奏環境へ移している。

本体は原機の86%のサイズ。歴代の音を特徴付けた3種類のフィルターを切り替えられ、さらにDRIVEとヘッドホン出力を加えた。復刻という枠の中でも、演奏場所や欲しい響きに合わせて使い分ける余地がある。小さくなった筐体でも、多数のスライダーから音へ触れる構成は続いている。

復刻に至る経緯で坂巻が挙げるのは、アナログ・シンセサイザーをもっと身近にしたいという考えだった。現在残るヴィンテージ機は、経年や整備の状態によっても音が異なる。開発チームは実機の音だけを手掛かりにせず、当時の設計を知る人物の助言も求めた。何をもって原機らしいと判断するか。その基準まで問い直すことが、復刻の仕事に含まれている。

新しく加わったDRIVEの着想は、試作中に生じた歪みから得られたという。原機の再現を進める過程で見つかった響きを、選択できる機能として残したのである。三種のフィルターも、歴代モデルを一台ずつ所有しなければ比較しにくかった違いを、同じ演奏の中で確かめる手段になる。再現すべき部分と、いま加える部分を切り分ける。その判断によって、過去の音の記録にとどまらない、演奏するための楽器になった。

公式インタビューでは、坂巻がサイズの考え方や、スライダーを守る付属ケースについて説明している。音源の再現だけでなく、運び、机へ置き、日々弾くところまで含めた復刻。過去の楽器への敬意は、使い続けられる条件を考えることにも表れている。