AW 01

サウンド&レコーディング・マガジン賞

ありふれた音が、音楽の素材に変わる。その入り口をソフトウェアでつくったAutoVersionは、2002年の「トランスMaxエクスプレス」出版記念オリジナル・パッチ・コンテストで、サウンド&レコーディング・マガジン賞を受賞した。部門はアート。坂巻 匡彦が千葉大学の卒業研究で取り組んだ、音楽をつくるための知識や技能の壁を低くする試みである。

作品の出発点は、音楽を聴くことと、つくることのあいだにある隔たりだった。パソコンとソフトウェアで音楽制作を始められる環境が広がっても、複雑な操作や音楽の知識は壁として残る。そこで、身近なものを鳴らし、マイクへ音を入れるという行為に注目した。専門的な演奏を覚える前に、自分の暮らしにある音を創作へ持ち込むための発想だ。

卒業研究「日常音を用いた自動作曲ソフトウェアの提案」では、自動録音と自動作曲を組み合わせ、フレーズの構成に完全ランダム型とランダム選択型を採用した。取り込んだ音の長さを調節し、パターンを組み合わせ、複数の音をミックスして出力する。楽器の音程を中心に曲を考えるだけでなく、音の配置や反復、重なりから音楽を形にする方法を探っている。

操作の中心にあるのは、再生や録音のための簡潔な画面だ。その背後には、テンポやフレーズの構成を扱う詳細画面がある。自動で音楽を組み立てる仕組みと、補助的な編集機能を組み合わせることで、まず音を出してみることから制作へ進める構成にした。入力した音が思いがけない組み合わせで返ってくる。その変化を聴くことも、次の素材を探すきっかけになる。

受賞結果はサウンド&レコーディング・マガジン2002年5月号で発表され、292ページからの結果発表に掲載された。身の回りの音に耳を向け、それを録音し、並べ直して聴く。AutoVersionは、この連続した体験をソフトウェアにまとめた作品である。受賞は、坂巻が研究と制作を通じて取り組んだ、誰もが音づくりを楽しめる環境を考える活動の一つの節目となった。