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東京大学 非常勤講師

坂巻 匡彦は2015年から東京大学の非常勤講師を務める。電子楽器の企画・開発から事業やサービスのデザインへと広がった実務経験を、工学を学ぶ学生との授業へ持ち込んできた。商品やサービスの企画とデザインを教える活動の軸にあるのは、アイデアを言葉で説明するだけでなく、形にして確かめること。実際に試す過程を、次の判断を生む機会として捉えている。

その実践の一つが、工学部の2021年度「動機付けプロジェクト」だ。PSIコースのインダストリアルデザイン課題を、青山和浩、青木史郎とともに担当した。自分が欲しいものを実現するための技能を身につけるという目標のもと、デザイン思考とプロトタイピングを組み合わせ、案をつくり、評価し、改良する過程を扱った。

授業計画には、財布の設計、CAD、デザインレビュー、最終発表が並ぶ。身近な道具を題材に、欲しいものの姿を考え、他者に伝わる形へと具体化する。そこには、形をつくる技能と、その形が使う人にとってどんな意味を持つのかを考える視点がある。レビューを挟みながら制作を進める構成が、着想と検証の往復を支える。

背景にあるのは、楽器づくりで培ったプロトタイピングの経験だ。機能や仕様を整理しても、演奏したときの楽しさまでは説明しきれない。試作品に触れることで初めて分かる感覚を、開発の判断へつなげる。この考え方は、完成形へ急ぐ前に、何を確かめる必要があるのかを問い直す姿勢でもある。

デザインと商品企画をめぐる本人の対話では、人の行動を観察し、新しい切り口を見つけることと、論理的に検討することの両方が語られる。造形、技術、使う人の体験を別々のものにせず、ひとつの案として考える。東京大学での教育活動も、実務で重ねてきたこうした問いを学生と共有し、発想を具体的な試行へ移していく場となっている。