MS-20M
鍵盤から離れることで、シンセサイザーの遊び方はどこまで広がるだろう。MS-20Mは、MS-20のアナログ音源を卓上のモジュールへ展開した組み立て式の楽器だ。2015年に「MS-20M Kit + SQ-1」として登場し、坂巻 匡彦はプロダクトマネジメント、商品企画を担当。ノブと端子を見渡せる横長のパネルは、音色を選ぶだけでなく、音が変わる仕組みに手を伸ばすための操作面になっている。
音作りの中心には、二つの発振器とハイパス/ローパスのフィルターがある。そこにオシレーター・シンクとFMが加わり、倍音の強い響きや金属的な音色へと踏み込める。前期型・後期型のフィルターを切り替えるスイッチも備えた。ひとつの音を鳴らしたままノブを動かすと、輪郭や質感が連続的に変わる。その変化を耳で追いながら、狙った響きへ近づけていく。
パッチ・パネルには、PWM IN、EG2 NORMAL OUT、TRIG SWも用意された。波形のパルス幅を揺らしたり、音の時間的な変化を別の制御に使ったりできる。トリガー・スイッチは、鍵盤を接続していないときにも発音を確かめるためのもの。ケーブルを差す場所とノブの位置が、そのまま実験の手順になる。小さな接続の変更が、思いがけない音の動きにつながる。
ほかの機器と組み合わせるため、CV/GATEはHz/V・V/Oct、S-Trig・V-Trigに対応する。3系統のJUNCTION端子は、プラグのサイズを変えたり制御信号を分配したりする接点だ。MIDI INとUSB MIDIではノート情報を受け取り、外部の鍵盤やパソコンから演奏できる。世代や接続方式の異なる機器を、同じ演奏環境に組み込むための選択肢が広がっている。
木製サイドパネルを備えた筐体は、ネジ止めやはめ込みを中心に組み立てるキット。はんだ付けや電子回路の専門知識は必要ない。組み上げた後には、同梱のSQ-1によるシーケンス演奏も待っている。作る、つなぐ、鳴らす。その一連の行為を通じて、完成品を操作するだけでは見えにくかった楽器との関わり方が生まれる。