KAKEHASHIプロジェクト 米国派遣
自分の仕事を海の向こうへ持ち出すと、隣にある専門分野も見え方を変える。2014年4月27日から5月4日、坂巻は国際交流基金のKAKEHASHIプロジェクトで訪米した。日本の若手デザイナー5名の一人として、ニューヨークとサンフランシスコを訪れている。
プログラムは、デザインに関わる施設や機関の訪問と、現地のクリエイターとの交流を組み合わせたもの。坂巻は楽器の商品企画を担う立場から参加した。帰国後の本人の寄稿では、米国のデザイナーと、同行した日本のデザイナーの仕事への情熱に触れた経験を記している。
派遣を告げる公式資料には、NOSIGNER、成瀬・猪熊建築設計事務所、Zaim、ブラケットの実務家と坂巻が紹介されている。建築、情報サービス、楽器と、扱う対象は一様ではない。グッドデザイン賞を受賞した若手デザイナーを選ぶ枠組みが、見た目の造形だけに限られないデザインの広さを、参加者の構成にも表していた。
訪問計画にはニューヨーク近代美術館やGoogleなどが挙げられ、文化を伝える施設と、技術やサービスを生む企業が同じ旅程の射程に入っていた。製品が展示される場所と、新しい仕組みがつくられる場所では、デザインを説明する言葉も変わる。現地の人々との交流に加え、同行者が何に注目するかを知ることも、旅の経験を複層的にする。坂巻の報告が他者の仕事への姿勢に触れているのは、その交流を完成品の見学だけでは捉えていないからだ。
移動したのは製品だけでなく、それを考える人と、その仕事の背景だった。参加者による訪米報告には、異なる領域の実践に接した個々の視点が残る。坂巻が書き留めたのも、施設や製品の印象だけに収まらない、仕事へ向かう人の姿勢である。楽器という専門を携えて外へ出て、自分の仕事を説明し、他者の実践を受け取る。その往復によって、日米のデザイナー交流は、互いの活動を内側から知る時間になっていた。