ELECTRIBE・MX / SX (SD)
慣れた操作で作ったパターンを、次の制作環境へ持ち出しやすくする。ELECTRIBE MX SD/SX SDは、既存のMXとSXをSDカードに対応させたモデルだ。坂巻はSD版の商品企画を担当。保存メディアとプリセットを更新し、ノブで音を変えながらパターンを作る構成を継承している。
MXはMMTによるシンセシスとPCM音源、SXはサンプリングを中心に据える。波形から音を作る方法と、録音した音を加工する方法の違いが、二つの機種の性格になる。いずれも真空管を使う出力段を備え、シーケンスの組み立てに加えて、鳴る音の質感にも手を入れられる。
MXとSXで異なる音の作り方を残したことは、シリーズを一つの方法へ統一しない選択でもある。シンセシスで素材そのものを作りたい場合と、録音した音の個性を生かしたい場合では、最初に必要な操作が違う。一方、パターンを組み、ノブで変化を加える制作の流れは共通している。音源の性格を選びながら、慣れた演奏の感覚を引き継げることが、二機種を併存させる実用的な意味になる。
SD対応による保存手段の更新は、音を出す回路の変更とは別の形で、楽器の使われ方へ関わる。制作したパターンや素材を残し、必要な時に持ち出すことも、音楽制作を続ける条件だからだ。既存の操作を大きく変えずにメディアとプリセットを更新すれば、使い慣れた機器の感覚を保ったまま新しい素材へ進める。ここでの商品企画は、MXやSXの初代を一から作ることとは区別される。蓄積された演奏方法を、次の制作環境へ受け渡すための展開である。
SXではタイム・スライスとタイム・ストレッチにより、取り込んだフレーズを分割し、音程を保ちながらテンポを合わせられる。録音素材の時間を組み替え、パターンへなじませる操作だ。SD版の新しいプリセットも、従来の演奏方法へ別の素材を加える。操作の蓄積を引き継ぎながら、保存と音の入口を更新した展開である。