「SynthKitの作り方 Paul Rothman」KORG坂巻のミュージックメイカー(4)
共同開発の始まりは、企業同士の正式な紹介ではなく、ウェブサイトの問い合わせフォームだった。2014年9月2日に公開された連載第4回で坂巻 匡彦は、littleBitsへ初めて連絡し、Synth Kitの構想を持ち込むまでを振り返る。異なる国と分野で働く人たちが、同じ道具の可能性を見いだした瞬間を描く開発記だ。
littleBitsの仕組みでシンセサイザーをつくりたい。そう考えた坂巻は、米国出張に合わせてオフィスを訪ねようとする。知り合いはおらず、利用者向けの窓口へKORGがどのような会社かを説明して送った。翌日に返事を寄せたのがPaul Rothmanだった。訪問の目的と日程をやり取りした相手が、のちにlittleBits側でSynth Kit開発を率いることになる。
訪ねたオフィスには3Dプリンターやレーザーカッターがあり、littleBitsを使った作品、段ボール、塗料が並んでいた。製品を考える場所と、手を動かして試す場所が近い環境だ。面談には創業者のAyah BdeirとPaulが参加した。坂巻は緊張して思うように説明できなかったと振り返りつつ、一緒にシンセサイザーをつくりたいという核心だけは伝えた。
提案が前へ進んだ背景には、Paul自身の構想があった。littleBitsの最初の社員となったPaulは、参加にあたり、同社の仕組みでシンセサイザーをつくりたいという希望をAyahへ伝えていたという。坂巻からの提案は、相手が以前から実現したかったことと重なった。協働を動かしたのは一方的な説得だけではなく、離れた場所で育っていた関心が出会うことだった。
記事には、最初の連絡が2012年12月20日、訪問が2013年1月13日、発売が同年12月17日と記されている。最初の接点から約1年で製品化へ進み、その速さにはプロトタイピングの活用が大きく貢献したと説明する。人のつながりと試作の積み重ねが、まだ存在しない楽器を具体的な製品へ変えていく。第4回は、その協働が成立した経緯を当事者の言葉で伝えている。
掲載記事
「SynthKitの作り方 Paul Rothman」KORG坂巻のミュージックメイカー(4)
元の掲載URL: https://media.dmm-make.com/item/1867/
記事: 坂巻 匡彦