Builders:並木香織 — チューナー企画と現場主義
チューニングの道具を考えるとき、視線はそれを使う人へ向かう。Buildersの並木香織インタビューは、KORGでのチューナー企画をたどる対話。坂巻 匡彦が聞き手となり、担当への異動から、現場の要求を製品へ反映する仕事までを聞いている。
AT-1 ACは、楽器の振動を拾うコンタクトマイクを組み合わせた企画だった。周囲の音がある状況でも自分の楽器を調整する、という使用場面が出発点にある。CA-10やAW-1の話題とともに、坂巻が母から渡されたAT-1を初めてのKORG製品として振り返る場面も登場する。
表示についての説明では、測定の精度と、使う人が安心して読み取れることを分けて考えている。管楽器で息を吹き込むときと、ギターの弦を巻いて調整するときでは、音の入り方も手の動きも異なる。数値を速く示せばよいとは限らず、動作に合った針の振る舞いや表示のタイミングを考える。ひとつの計測機能が、楽器ごとに違う操作の体験へつながっている。
並木は吹奏楽部やオーケストラ、音楽家の現場へ足を運び、練習や創作を支える人々から意見を聞いていた。要望をそのまま足し合わせるのではなく、背景にある目的を読み取り、社内の開発者の関心とも調整する。坂巻とのやり取りからは、企画を発想だけの仕事に限定しない姿勢が見える。楽器の種類が変われば、測りたい音も使う状況も変わる。小さく目立たない道具を改良する仕事の内側に、多くの演奏現場への観察が蓄積されている。
製品を小さく、目立たなくまとめるという並木の関心も、使い手の側から読むことができる。チューナー自身を際立たせるより、楽器を調整し、演奏へ戻れることを支える。普段は意識されにくい道具の中に、測定の精度、表示への信頼、持ち運びやすさが重なる。その一つずつを、現場の声と開発の判断で整えていく仕事を伝えている。
掲載記事
チューナーも、それを使う人も好きだからこそ「超現場主義」の企画担当 — 並木香織
元の掲載URL: https://rdm.ne.jp/column/builders/35951
取材時期: 2013-08
記事: 土屋綾子(RandoM編集部)
撮影: 後藤武浩