AW 05

GOOD DESIGN AWARD

初めて触る人にも、深く組み上げたい人にも、同じ部品から入口を用意する。littleBitsとKORGの共同開発によるSynth Kitが、2015年度グッドデザイン賞を受賞した。審査評は、直感的に楽しめることと、複雑な構成へ発展させられる自由さの両立に着目している。

キットの仕組みは、磁石で電子モジュールをつなぎ、自分のシンセサイザーを構成するもの。接続の組み合わせを変える行為が、音の仕組みを試す操作になる。使い手の理解に合わせて構成を増やせることが、簡単に始めるための配慮と、継続して探る余地を結んでいる。

受賞発表の審査評が着目した二つの性格は、利用者を初級と上級に分けて別の道具を用意する発想とは異なる。まず少ない部品で音を出し、働きがわかれば別の部品を加え、構成を変えていく。同じ接続方法のまま、扱う関係を少しずつ複雑にできるためだ。入口のわかりやすさが、その先に進む余地を狭めないように設計されている。

電子楽器の内部には、音を生む回路と、その音を制御する信号の関係がある。Synth Kitではその関係を手元へ取り出し、接続し直せる単位にした。形を触り、つながりを目で追い、結果を音で確かめる。異なる感覚を行き来しながら理解できることが、部品の配置や接続方法の意味を大きくしている。2015年度の受賞は、製品の外観だけを切り出すのでなく、組み立てから演奏へ進む体験を含めたデザインの実績として捉えられる。

ディレクターは坂巻 匡彦とPaul Rothman、デザイナーはGeof Lipmanと高橋達也。部品の造形、回路の機能、遊びながら学ぶ体験を、共同で一つの製品へまとめた。直感的な操作と複雑な構成への自由は、同じ仕組みの中にある。理解が進むほど組み方を変えられることが、はじめの一歩の先にも探る余地を残している。