AW 07

文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門

磁石で部品をつなぐと、音を生む回路が楽器になっていく。littleBits Synth Kitは、第18回、2014年度の文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門で、審査委員会推薦作品に選出された。電子回路の機能を手で扱えるモジュールへ分けた、シンセサイザーのキットだ。

作品概要が紹介するのは、異なる働きを持つ電子モジュールを接続し、組み立てて演奏する体験。オシレーターやキーボード、シーケンサーを組み合わせ、つなぎ方を変えながら音づくりを試せる。音の仕組みを学ぶことと、自分の楽器をつくることが同じ操作の中にある。

仕組みの違いを、音として確かめられることも、このキットの特徴だ。音の源になるオシレーターと、音程を操作するキーボード、順番に信号を送るシーケンサーは、それぞれ異なる役割を持つ。ひとつの箱に収められていた働きを部品ごとに分ければ、どこで音が生まれ、何がその音を変えるのかが配置として見えてくる。接続を変えながら理解を深めるための、物理的なインターフェイスである。

文化庁の作品記録では、種類をガジェットとし、米国のlittleBitsと日本のKORGの共同開発として紹介している。推薦作品として名を連ねたのは、音色を聴かせる単独の楽曲ではなく、使い手が音楽をつくるためのキットだった。組み上げた構成を鳴らし、違う構成へ戻して試す。作品のかたちが一つに固定されず、使う人の操作の中で何度も変わることが、道具であり遊びでもあるこの製品の性格を伝えている。

企画を坂巻 匡彦とAyah Bdeir、開発を高橋達也、Paul Rothman、Geof Lipmanが担った。共同制作によるモジュールは、音を生む回路を、組み替えられる部品として使い手へ渡す。つながりを変えると、できることも変わる。楽器を完成品として受け取る行為に、構成を自分で決める余地を加えた取り組みである。