GOOD DESIGN Best 100
製品の回路図を公開すると、使い手は内部を学び、自分で手を加えられる。KORGの回路図公開によるオープンなコミュニティ形成は、2013年度グッドデザイン・ベスト100に選出された。受賞番号は13G121053。楽器と使い手の関係を開く取り組みへの評価である。
アナログシンセサイザーの回路図を共有する仕組みと、それを通したコミュニティ形成が受賞対象になった。内部の働きを読むための情報が渡されることで、製品は演奏の道具であると同時に、学習や改造の出発点にもなる。使う人は、自分の手で仕組みに関わることができる。
回路図が読めることの意味は、仕様表を知ることとは異なる。どの部品がどこへつながり、信号がどの経路を通るかを追えるため、音が生まれる仕組みそのものへ近づける。完成した製品の操作方法を覚えることから、内部の構成を理解することへ、使い手が進むための足場になる。メーカーが公開する設計情報は、その学習を支える資料でもある。
monotronをめぐる小林茂との対談で、坂巻は基板にヒントを記したことや、使い手の改造にメーカーの製品が応答する関係を語っている。誰かの試みを見て別の人が考え、メーカーも次の可能性を知る。回路図を公開する行為は、その往復を始める接点になる。受賞対象の名前に「コミュニティ形成」とあるのは、情報を渡した後に続く人々の活動まで、製品を取り巻く価値として扱っているからだ。
ベスト100に選ばれた取り組みは、設計の対象を、製品の外側にまで広げている。完成した楽器から始まる学習や改造、そこで生まれた知識や制作の共有。オープンなコミュニティ形成は、使い手の活動が続くための情報を渡す仕事でもある。どこまでを製品とともに届けるか。その問いを、電子楽器の企画と並べて扱った事例だ。