volca keys
和音の厚みをノブで変え、短いフレーズをその場で育てる。volca keysは、3つのオシレーターを備えた小型アナログ・シンセサイザーだ。坂巻は商品企画を担当。企画と回路設計を分担した開発者の対話では、小さく、シーケンサーを備えたアナログ楽器という枠から製品を考えたと語られている。
6種類のボイシングで、ポリフォニック、ユニゾン、リング・モジュレーションなどを選択。同じ音程の並びでも、発振器の組み合わせが響きの表情を変える。ディレイを加えれば、短い演奏の後にも音が続く。音を厚くする操作と、時間に広げる操作を一緒に試せる構成だ。
三基の発振器を使うボイシングは、少数の操作から異なる音の重なりへ進むための道筋である。別々の高さを弾いて和音にする、同じ旋律へ重ねる、発振器同士の関係を変えて質感を動かす。鍵盤へ置く指の数が同じでも、選んだモードで響きの組み立ては変わる。音色を細かく作り込む前に、まず重なり方を聴いて選べるため、シンセサイザーの構造を演奏しながら知る入口にもなる。
Fluxによって演奏のタイミングを扱う機能は、等間隔のステップを並べる制作に別の感触を持ち込む。ノブの動きも記録できるので、音符の列と音色の変化が一緒に反復する。その上へディレイを加えると、弾いた音と戻ってくる音の間にも関係が生まれる。和音を鳴らす小さな鍵盤というだけではなく、短い演奏を保存して聴き直し、変化させるための装置なのだ。SYNC端子は、その反復をほかの楽器の時間へ合わせる役割を持つ。
16ステップのモーション・シーケンスとFluxは、ノブの変化や演奏の間合いをフレーズへ取り込む。電池駆動、内蔵スピーカー、SYNC端子により、一台で弾くことから複数の機器を合わせることへ進める。小さな本体の中で、音色と演奏の時間が結び付いている。