東京工芸大学 — 総合メディア特論
技術であると同時に、表現でもある。写真を起点に発展した東京工芸大学には、メディアをその両面から捉える歴史がある。坂巻は2010年6月9日、同大学の総合メディア特論で講義を行った。電子楽器の商品企画に携わる立場から、大学のメディア教育に参加した。
大学の公式な歴史紹介は、1923年に設立された小西写真専門学校を原点とする。写真は技術と芸術を併せ持つ新しいメディアであり、その教育の場をどう設けるかが課題だったという。後の芸術学部開設の経緯も、写真、映像、デザインを横断する学びを伝えている。
東京工芸大学は、写真というメディアを通して、技術と芸術の両面を育ててきた。装置や材料の仕組みを知ることと、何をどう写すかを考えることは別々でありながら、一枚の像の中で結びつく。後に写真、映像、デザインを扱う芸術学部へ展開した背景も、この二面性とつながっている。表現と技術を分けきらない教育機関の成り立ちがある。
電子楽器にも、同じように装置と表現の二面性がある。回路やソフトウェアが音を生み、その音を人が操作して音楽にする。機器の性能を整えることと、使い手がどんな表現に近づけるかを考えることは、互いに関係している。楽器の商品企画を担う実務家として「総合メディア特論」に登壇したこの講義も、技術と表現が接する場の一つだった。メディアを画像や音の種類だけで区切らず、表現を可能にする技術と道具から考える背景が、この講義の周囲にはある。
写真技術から出発し、工学と芸術の双方を育ててきた東京工芸大学は、装置と表現が交わる教育の場だ。写真は、装置で像を記録する技術であり、見る人へ何かを伝える表現でもある。技術と芸術が重なる大学の成り立ちに、電子楽器を扱う実務家の登壇が加わる。道具を単なる装置として見るのか、表現を生む媒体として見るのかという問いは、大学の歴史とこの講義題目を近づけている。