奈良女子大学・お茶の水女子大学 生活工学共同専攻 キックオフシンポジウム
生活者の視点から、工学の問いを立て直す。奈良女子大学とお茶の水女子大学は、生活工学共同専攻の開設に先立ち、2015年8月1日にキックオフシンポジウムを開いた。会場は奈良女子大学講堂。翌2016年度の開設を見据えた、教育・研究構想を社会に示す機会だった。
公式ポスターには、坂巻が15時10分開始予定の「企業講演3」に登壇すると記載されている。肩書はKORG商品企画室室長兼デザイン課課長。大学院の構想を語る場に、電子楽器の商品企画とデザインに携わる実務家が加わった。
「生活」という言葉が加わると、工学の対象は装置の性能だけでは捉えきれなくなる。使う人の身体、毎日の行為、置かれる環境。それらと技術がどう関係するかを考えることが、生活者の視点を含む設計につながる。共同専攻の始動を告げる企画に企業講演を組み込んだ構成は、研究の成果を社会へ届ける現場との接点を、専攻の出発点から設けようとするものだった。
電子楽器も、この関係を具体的に考えられる道具である。回路が音を生み出せることと、人がその音を扱って表現できることは、同じ条件ではない。つまみや鍵盤の位置、音の変化を確かめる手掛かり、使われる場所によって、製品の体験は変わる。商品企画とデザインを兼ねる仕事には、こうした技術と人の接点を捉える視点がある。製品の内側の技術と、外側で起きる生活者の行為をつなぐ立場が、大学院の構想へ招かれている。
生活工学共同専攻の設置認可申請が進むなか、開設に向けた構想を共有するシンポジウムだった。坂巻は電子楽器の商品企画に携わる実務家として登壇した。生活と技術を別々の領域に置かず、暮らしの側から研究や設計を考える。その構想に企業の経験を接続する登壇だった。大学院の新しい専攻を準備する段階で、研究者だけでなく、日々製品を企画する実務家を招く。教育の制度と実社会の仕事を近づける接点が、立ち上げのプログラムに組み込まれていた。