奈良女子大学 工学部 非常勤講師
坂巻 匡彦は2022年4月から、奈良女子大学工学部の非常勤講師を務めている。日本の女子大学として初めての工学部が開設された時期に着任し、現在まで教育に携わる。電子楽器の商品企画・プロダクトデザイン、事業やサービスの開発で培った経験を背景に、技術と人の暮らしの関係を考える大学教育へと活動を広げている。
着任時に担当したのは「技術史」だ。新しい製品を企画する実務と、技術の歩みを学ぶ科目。一見、未来と過去に分かれる二つの領域は、いまある道具や仕組みを問い直すという点でつながる。製品の形や操作は、技術の進歩だけで決まるものではない。人が何を求め、どう使ってきたのかという時間の積み重ねも、その姿に関わっている。
実務の背景には、楽器づくりから事業開発へと展開してきたプロトタイピングの経験がある。仕様を整理するだけでは分からないことを、試作品に触れて確かめる。坂巻は本人寄稿で、演奏したときの楽しさのように数値へ置き換えにくい価値と、開発における判断の関係を論じてきた。技術を使えることと、使う人に価値が生まれることを結び付けて考える視点だ。
教育の場となる奈良女子大学工学部は、生体医工学、情報、人間環境、材料工学などを横断する学びを掲げる。少人数での対話や、チームで課題に取り組むPBLを重視し、学生が自分の専門性を組み立てる構想を持つ。専門知識を深めることと、異なる知識をつなぐこと。その両方を扱う環境に、商品やサービスを社会へ届けてきた実務家として関わっている。
東京大学、千葉大学での教育と並び、奈良女子大学での非常勤講師は、実務と大学教育を継続して行き来するキャリアの一部になっている。商品企画やデザインの実践には、技術、使う人の体験、事業としての成り立ちを合わせて考える場面がある。そうした複数の視点を持つ立場から、工学部の教育に参加してきた。2022年4月の着任を起点に続く、教育分野での職歴である。