043

電子楽器の進化が音楽の未来を変える

電子楽器の進化を、性能の向上だけで語れるだろうか。2016年7月31日、坂巻は当時WIRED日本版編集長だった若林恵との対談に参加した。電子楽器の進化が音楽の未来を変えるという題で、KORGの商品企画に携わる立場から登壇した。

舞台は松武秀樹プロデュースのpinewaves Vol.1。7月20日から31日まで、KONTACTO EAST STUDIOでシンセサイザーの展示や関連イベントが行われ、対談はその最終日の企画だった。展示の最終日を飾るトークとして、電子楽器の未来を語る時間が設けられた。

pinewavesの開催案内は、シンセサイザーに触れる場と、楽器や音楽について語る機会を重ねている。展示された道具を見たあと、その道具がどのような環境から生まれるかを聞く。製品の内側にある技術と、外側にある企業や文化の両方へ視線を向けられる構成だ。最終日の対談が扱う「未来」も、新しい音源の性能だけではなく、音をつくる人や組織の変化を含む問いだった。

メイカームーブメントという主題は、使い手が楽器に手を加えたり、自分の道具をつくったりする側面へ話を広げる。アナログ楽器への関心は、技術の新旧だけでなく、手で操作し、変化を耳で確かめる体験にも関わる。企業とスタートアップでは、アイデアを製品へ移す条件も同じではない。これらを一つの対談に並べた企画は、音楽の未来を完成した製品の予測としてではなく、それを生み出す仕事と文化の関係から考えようとしていた。

当時のセッション案内は、企業とスタートアップのイノベーション、アイデアの実現、メイカームーブメント、アナログ楽器の魅力をテーマに挙げる。楽器の仕組みとともに、発想を製品へ育てる人や組織も、その射程に入る。誰が、どんな組織で、どこから着想を得て楽器をつくるか。電子楽器を使う文化と、それを生み出す環境を一緒に考える問いが、展示の最終日に置かれていた。