坂巻 匡彦 × 小林茂 対談
メーカーが回路図を渡すと、製品の先を使い手がつくり始める。MATOGROSSOの対談で、坂巻 匡彦と小林茂は、monotronやlittleBits Synth Kitを手がかりに、改造とものづくりの広がりを語った。製品の完成を、使い手との関係の入口として考える対話だ。
monotronの基板に記したヒントと回路図公開は、使い手による独自の発展につながった。坂巻はDUO/DELAYを、そうした改造へのメーカー側からの応答とも説明している。littleBitsとの共同開発では、2013年1月の米国出張時に相談し、シンセサイザーをつくりたい思いが重なった経緯を振り返る。
対談の背景には、Maker Faire Tokyo 2013で発表されたlittleBits Synth Kitがある。12個のモジュールを磁石で接続し、自分でシンセサイザーを構成する製品だ。monotronを開けて内部に手を加える方法と、最初から組み替える部品を用意する方法。必要となる知識や手の動きは違っても、楽器の成り立ちへ使い手が参加するという関心が、両者を結び付けている。
二人の原体験をたどる場面では、メーカーに入る前に使っていた楽器や、仕事として新しいものをつくる関心も語られる。開発者が想定した以上の使い方をする演奏者がいて、それが新しい音楽へつながる。楽器では、つくり手の意図が使い手の解釈によって広がっていく。製品が完成したところで設計の意味を閉じないこと。対談は、その関係を、商品企画とMakerの活動の両側から捉えている。
回路の情報を公開することと、部品をつなげるようにすること。異なる方法に共通するのは、使う人が構成へ関わる余地を設ける発想だ。自分で変えられる部分があれば、製品は新しい試みの出発点になる。使い手の改造がメーカーの次の製品へ応答を促し、メーカーの提案がさらに別の制作を呼び込む。楽器づくりは、箱の外側でも続いていく。
掲載記事
世界は“辺境”より再構築される
元の掲載URL: http://matogrosso.jp/saikouchiku/saikouchiku-01.html
記事: 浅井愛(編集部)/取材・構成
撮影: 小久保松直