Builders:金森与明 — 音楽とサウンドデータ開発
機能を増やすほど、楽器の面白さが伝わるとは限らない。Buildersの金森与明インタビューは、音をつくる仕事と、製品の要素を選ぶ仕事が重なる対話だ。坂巻 匡彦が聞き手を務め、サウンドデータ開発や音源アルゴリズム、ELECTRIBEなどの開発をたどる。
サウンドデータ開発は、出音の調整やプリセット音、デモソングなどを担う。金森の演奏者としての視点と技術の知識が、製品の判断へ結び付く。KingKORGの開発では、坂巻と約半年議論し、機能とデザインの釣り合いを見ながら要素を絞ったことが語られている。
ELECTRIBE誕生の話では、ドラム音のモデリングとシーケンサーを組み合わせた試みが、独立した製品へ向かった過程が語られる。大きなシンセサイザーの付加機能に収めるのではなく、小さく手に取りやすい道具として成立させる。音源の計算を担うDSPの資源や価格の条件を考え、ER-1とEA-1の仕様へまとめた。技術の面白さを、異なる規模の製品へ移す仕事だった。
金森は数学とソフトウェアの経験を持つ一方、バンドで鍵盤を弾き、レコードを聴いてきた音楽家でもある。アルゴリズムを考える視点と、演奏したときのわかりやすさを確かめる視点が、同じ人の中にある。多くのことができる仕組みに関心を持ちながら、製品としては使い手が理解できるところへ着地させる。その選択は、機能を削って無難にすることとは違う。楽器としての個性が伝わるように、残すものと省くものを決める仕事である。
microKORGの企画を振り返る場面では、当時の担当者が紙で形を試したエピソードも語られる。エフェクターほどの箱とミニ鍵盤を組み合わせる発想を、音源の知識と製品化の仕事が支えた。アイデアを思いつく人と、音や操作を成立させる人。その異なる仕事がかみ合う過程を、後輩の企画担当者である坂巻が聞き出している。
掲載記事
音楽愛+よく切れる刀を持つマルチ・プレイヤーの、洗練された視点 — 金森与明
元の掲載URL: https://rdm.ne.jp/column/builders/22088
取材時期: 2013-08
記事: 土屋綾子(RandoM編集部)
撮影: 後藤武浩