「KORGは“楽しい楽器”を作りたい」KORG坂巻のミュージック・メイカー
楽器を簡単にすれば、音楽はもっと身近になるのか。DMM.makeの連載第1回で坂巻 匡彦が考えるのは、操作の少なさと、音を生み出す楽しさの違いだ。2014年4月24日に公開されたこの文章は、KORGの商品企画を担う立場から、初心者にもプロにも届く楽器の条件を探っている。作業を肩代わりする便利さよりも、自分で音を動かしたときの手応えに目を向けた。
冒頭に登場するのは、XYパッドで効果を操るKAOSS PAD、Nintendo DS用のDS-10、iPad用のiELECTRIBE、そしてMS-20 mini。ゲーム機やタブレットを音楽の道具に変えることも、かつてのアナログ回路を再び届けることも、楽器と人の接点を広げる試みとして紹介される。製品のかたちは異なっても、使う人が音へ近づくための入口をつくる姿勢が通っている。
自身が企画したkaossilator、monotron、Synth Kitを例に、その考えを具体化する。kaossilatorでは指先の動きがフレーズになり、monotronでは少数の操作子を通してアナログ音源の性格に触れられる。Synth Kitでは、音をつくる機能そのものを組み合わせられる。音楽理論や機材の知識を最初から求めるのではなく、触れた結果から次の操作へ進める構成だ。
一方で、ジャンルや雰囲気を指定するだけで曲ができる仕組みには、別の問いが生まれる。曲を手に入れることと、作曲を楽しむことは同じではない。自動化によって失われる体験に目を向け、何を省き、何を使い手に残すべきかを考える。取り除くのは創造する行為そのものではなく、その行為を始めるまでの障壁である。
目指すのは、経験のある人が面白がり、初めての人も自分でできたと感じられる楽器だ。プロ向け機材の機能を単に減らすのではなく、その楽器ならではの面白さを見極め、触れて分かるかたちに凝縮する。以降のSynth Kit開発記へ続く連載の出発点として、商品企画の中心にある価値判断を言葉にしている。
掲載記事
「KORGは“楽しい楽器”を作りたい」KORG坂巻のミュージック・メイカー
元の掲載URL: https://media.dmm-make.com/item/277/
記事: 坂巻 匡彦